日中笹川医学研究者制度は財団法人日中医学協会設立後の第1回常任理事会において、かねて懸案事項であった、中国における医療分野の人材養成事業のために、日本船舶振興会(現日本財団)に助成申請することを決めたことから始まる。当時、協会は10名程度の招請を想定していたが、日本船舶振興会笹川良一会長(当時)、笹川陽平理事(現会長)の英断により、中国の医療従事者を1年間に100名、10年間に1,000名招請するという構想ができ上がった。必要経費については、笹川記念保健協力財団(石館守三理事長)が日本船舶振興会の助成事業として責任を持つことになり、本協会は受け入れの計画・実施ならびに事業の管理を全面的に担うこととなった。
1986年8月14日、中国衛生部、笹川記念保健協力財団、日中医学協会の三者は「笹川医学奨学金に関する協定書」に調印し、日中医学交流史に名を刻む奨学金制度が発足した。これにより、1987年10月、第1期生49名が来日し、日本全国35ヵ所の医療・研究機関において研修が開始された。
出月康夫 日中医学協会常任理事「研究助成 日本笹川医学研究者制度」−『日中医学協会 事業20周年』
4月になって桜が満開になる頃に日中笹川医学研究者制度の研究者歓迎式典が毎年開催される私はいつもこの式典に参加するのが楽しみである。日本に到着したばかりの留学生は自分の名が呼ばれるとすくっと立つ。受入側の大学の先生の名が呼ばれ立ち上がり、初めてお互い顔を合わせるこの式典は感動的である。
これまで私が受け入れた留学生は、広西省チワン族自治区広西中医学院の黄麗輝先生、黒竜江省医院の李健明先生、古林省延辺大学の金玉蓮先生である。留学生の教育と研究を通じて彼等も私も大きく発展する機会が得られ、いくら感謝しても感謝しきれない。
加我君孝 日中医学協会常任理事「牡丹の中国、桜の日本」−『日中医学協会 事業20周年』
本制度の下これまでの20年間で、約1,800名の中国人研究者が日本での勉学を経験され、現在は、それぞれが日中両国を繋ぐ医学・医療界の指導者として活躍しておられます。たとえば、2006年中国国家科学技術進歩賞受賞者リストには3人のお名前が見られ、昨年開催された「2006年日中医学交流会議メタボリックシンドロームー日中における現状と取り組み−」ではその演者の一人が第25期生であり、また本協会機関誌「日中医学」VOL.21 N0.6の特集記事執筆者も6名中4名が「卒業生」でした。さらに、かつての指導者・研究者の間柄がその後も絶えることなく続き、愛弟子が本制度を使って再び来日、師とともに実り多い共同研究を継続しておられる例もあります。このように、本制度の恩恵を受けた研究者たちは、その成果としてその後、日本で得た技術や知識を生かしながら中国の発展に貢献するだけでなく、日本との交流の架け橋としても大きな力になって下さっているのです。
森 亘 日中医学協会会長「出会い」−『日中医学協会 NewsLetter No.12』 |