中国医療養老政策立案者訪日研修を実施しました
2019/03/04
笹川医学奨学金進修生同学会事業の一環として、中国から国家衛生健康委員会 医政医管護理与康復処 孟莉副処長を団長とする8名の訪日団を迎え、2月25日~28日までの日程で、中国医療養老政策立案者研修を行いました。
中国では2017年に65歳以上の高齢者が1億5千万人を超え、今後益々高齢化が進行することが予想されており、要介護者も多いことから高齢者のQOLを改善することは国家的課題とされています。高齢者のQOL改善の実現には医療サービスと養老サービスの連携(医養結合)が重要と考えられています。今回の中国医療養老政策立案者訪日団の目的は、日本の高齢者対策における介護保険制度、国や自治体の取組み、地域包括ケアシステムについて学ぶとともに、介護施設の視察を行い日本の現状を理解することです。
訪問団は東京到着後直ちに、笹川記念保健協力財団を訪問し、喜多悦子会長による講演(「日本財団在宅看護センター」起業家研修について)を聴講し、会長ならびに財団職員との意見交換を行いました。
2日目は、東京都福祉保健局を訪問し「東京都の在宅療養施策」ならびに「東京都における介護保険施策」について局員より話を聞きました。質疑応答では、中国側より各種制度を運用するための具体的な仕組み(各種支援窓口の運営主体、介護保険財政、介護サービスの民間運営、ICTアプリの提供、ケアマネジャーの資格の有無など)について突っ込んだ質問が時間の許す限り行われ、日本の介護サービス体制への強い関心が伺われました。
午後は、株式会社ニチイ学館が運営している訪問・通所介護施設であるニチイケアセンターしろかね、その後、同じくグループホームサービスを運営するニチイホーム用賀を視察し、職員の皆様と意見交換をしました。
3日目は、東京都足立区にある医療法人財団厚生協会 介護老人保健施設 足立老人ケアセンターを訪問し、介護・医療・福祉部門を見学しました。職員の皆様には中国側からの質問に大変丁寧に答えてくださいました。医療(病院)-介護(老健)が連結した法人経営が大変参考になったようです。
4日目は、午前中、順天堂大学を訪問し、新井一学長(日中医学協会業務執行理事)と面会し、順天堂大学における高齢患者に対する高度医療の特性とその取り組みについて話を伺いました。人材育成の面で日本における看護師の専門資格取得プロセスや管理制度について中国側から多くの質問が出されました。
午後は厚生労働省を訪問し、まず老健局より老人医療と介護連携および市区町村を主体とする介護保険制度の推進と地域包括ケアシステムの構築について話を聞きました。中国側からは介護保険制度の保険料の内訳、介護サービス利用の手続きに関して質問が多くありました。次に医政局より看護・介護人材育成に関してお話を聞きました。中国にはない国家資格となる介護福祉士について、その資格取得のためのプロセスや学習カリキュラムを聞きました。中国側からは病院内外での介護福祉士の役割、保健師、助産師、看護師・准看護士の法定義と人材育成・資格取得プロセスについて、面談時間ぎりぎりまで質疑応答が続きました。
日本の高齢者対策における介護保険制度、介護施設、提供サービスの内容、地域包括ケアシステムはきめ細かく、そのためかなり複雑な仕組みを構築されていて、他国の方が短時間で十分理解することは容易ではないとの印象でした。一方、厚労省局員との面談終了後も質問があれば受けて頂けるとのご提案があり、早速申し込みをされていました。高齢化は日本が先行していますが、日本と同様加速度的に高齢化が進むと予測される中国において日本の医療介護システムが中国の政策立案の一助になれば幸いです。