日中医学交流会議2019東京を開催しました
2019/07/02
日中医学協会と中華医学会が主催となり、日本医師会共催のもと、2019年6月19日に日本医師会館大講堂において《日中医学交流会議2019東京》を開催しました。本交流会議のテーマはがん治療の現況と近未来で、日中双方より一流の専門家を演者としてお招きしました。また、シンポジウムに先立ち、2018年ノーベル生理学・医学賞を受賞された京都大学特別教授 本庶佑先生より基調講演を頂きました。本交流会議には、中国から中華医学会関係者、座長・演者総勢55名、日本側の厚労省来賓、日中医学協会役員、演者・座長34名、一般参加約300名、計390名ほどが参加し、盛大な会合になりました。
日中医学交流会議は、1987年からほぼ毎年開催している当協会主催の学術シンポジウムで、昨年は北京において生活習慣病をテーマに開催しました。今年は、日中両国民の医療における最大の関心事である「がん」を採り上げました。
開会式は、日中医学協会業務執行理事の跡見裕先生と春日雅人先生の司会進行のもと、小川秀興当協会理事長の開会宣言で幕を開けました。髙久史麿当協会会長、饒克勤中華医学会副会長兼秘書長のご挨拶に引き続き、吉永和生厚生労働省大臣官房審議官(根本匠厚生労働大臣名代)、孔鉉佑中華人民共和国駐日本特命全権大使、横倉義武日本医師会長・世界医師会前会長、笹川陽平日本財団会長からご祝辞をいただきました。
司会の跡見裕協会理事(左)と春日雅人協会理事(右)
小川秀興協会理事長 髙久史麿協会会長 饒克勤中華医学会副会長
吉永和生厚労省審議官 孔鉉佑中国大使 横倉義武日本医師会長 笹川陽平日本財団会長
開会式に続いて、京都大学特別教授 本庶佑先生による基調講演が行われました。PD-1の同定とその免疫ブレーキ機能の発見、がん免疫治療抗体としてのニボルマブの創製と開発成功への道筋、今後の免疫治療法の期待についてお話されました。聴講者は、今も若い研究者たちと未解決の課題に精力的に取り組んでおられる本庶先生の研究者としてのマインドに触れる貴重な時間になったようでした。講演終了後、中華医学会、日中医学協会関係者が本庶先生を囲んで写真におさまり、記念すべき基調講演になりました。
ご講演中の本庶佑先生
本庶佑先生を囲んで当協会役員と中華医学会関係者
基調講演に続きシンポジウムを行いました。司会進行は、日比紀文協会業務執行理事と樊嘉中国科学院院士・復旦大学付属中山医院教授が務めました。シンポジウムは「ウィルス治療」、「分子標的治療」、「放射線治療」、「内視鏡治療」の4つのセッションから成るもので、それぞれのセッションにおいて日中双方より1名ずつ講演を行いました。
司会の日比先生と樊嘉先生
最初のセッション、ウィルス治療では、座長を大阪大学大学院医学系研究科教授 金田安史先生と、北京大学腫瘤医院結直腸腫瘍外科主任 顧晋先生が務めました。講演では、東京大学医科学研究所教授 藤堂具紀先生が、遺伝子組み換えヘルペスウィルスを用いたがんウィルス療法の臨床開発について、北京大学腫瘤医院副主任医師 崔伝亮先生が、中国人メラノーマ患者における腫瘍溶解性ウィルスによる治療進展について発表されました。
座長の金田安史先生と顧晋先生 ご講演中の藤堂具紀先生 ご講演中の崔伝亮先生
次いで、分子標的治療のセッションでは、座長を東京大学先端科学技術研究センター教授 油谷浩幸先生と、中国科学院院士・復旦大学付属中山医院教授 樊嘉先生が務めました。講演では、国立がん研究センター研究所長 間野博行先生が、分子標的治療とがんゲノム医療について、上海市肺科医院教授 周彩存先生が、肺癌における精密医療の将来展望について発表されました。
座長の油谷浩幸先生と樊嘉先生 ご講演中の間野博行先生 ご講演中の周彩存先生
3番目の放射線治療のセッションでは、座長を日本赤十字社和歌山医療センター院長 平岡眞寛先生と、中国医学科学院腫瘤医院教授 王緑化先生が務めました。講演では、北海道大学大学院量子医理工学院長 白土博樹先生が、がん治療における量子医理工学の現況と近未来について、中国側からは中国工程院院士・山東省腫瘤医院院長 于金明先生が放射免疫療法の新たな取り組みについて発表されました。
座長の平岡眞寛先生と王緑化先生 ご講演中の白土博樹先生 ご講演中の于金明先生
最後の内視鏡治療のセッションでは、座長を北里大学炎症性腸疾患先進治療センター長 日比紀文先生と、首都医科大学付属北京友誼医院教授 張澍田先生が務めました。講演では、昭和大学横浜市北部病院消化器センター長 工藤進英先生が内視鏡診断の新たなステージ・超拡大内視鏡とAI自動診断について、中国医学科学院腫瘤医院内視鏡主任 王貴斉先生が、中国における食道扁平上皮腫瘍に対する内視鏡治療について発表されました。どのセッションにもフロアや座長から活発な質疑応答があり、シンポジウムは大変盛り上りました。
座長の日比紀文先生と張澍田先生 ご講演中の工藤進英先生 ご講演中の王貴斉先生
シンポジウムの最後に、日中両国専門家の共同による「東京宣言」が採択されました。がん治療において、日中両国の医・歯・薬・看護などの専門家の意思疎通と交流を強化し、長期的かつ効果的な協力体制を構築し、その成果を共有することを約束し、シンポジウムの幕を閉じました。
協会業務執行理事 日比紀文先生による「東京宣言」の発表
すべての学術プログラムが終了後、情報交換会が日本医師会館小講堂にて開催され、140名あまりが参加しました。新井一協会業務執行理事と姜永茂中華医学会対外連絡部主任が司会を務め、小川秀興協会理事長、饒克勤中華医学会副会長のご挨拶、横倉義武日本医師会長のご祝辞、安達勇協会副会長の乾杯のご発声により、情報交換会が盛大に催されました。参加者の約半数は中国の訪日団および日本在住の中国の方々であり、職種についてもアカデミア、製薬メーカー、医療機器メーカーなどの医療関係者が幅広く出席されていました。終始、和やかな雰囲気で進み、1時間半ほどで中締めとなりました。
新井先生と姜先生 小川理事長 饒副会長 横倉会長 安達協会副会長
歓談の様子
本交流会議2019東京の開催にあたり、関係各位並びにスポンサーシップ企業の皆様から多大なるご協力とご尽力をいただきました。この場をお借りし、深く感謝を申し上げます。
本事業は、当協会機関誌『日中医学』Vol.34No.2で特集いたします(2019年9月発行予定)。