JICA受託事業:中国国別研修「感染症対策」研修を実施しました
2020/01/20
2018年に続き独立行政法人国際協力機構(JICA)より中国国別研修「感染症予防及び対策」を受託し、2019年12月4日から12月11日の6日間の日程で研修を行いました。本研修の目標は、中国中西部地域における新興・再興感染症の対応能力の強化です。中国訪日研修団は、中日友好医院の王書鵬医師を団長とし、北京市、チベット自治区、安徽省、陝西省、貴州省、新疆ウィグル自治区、青海省の7病院から派遣された呼吸器内科、感染症科、救急科、ICUの医師、看護師及び院長・副院長で、総勢16名でした。
研修一日目、新型インフルエンザに対する日本政府の対策について基本的知識を学ぶことからスタートしました。講義には厚労省健康局結核感染症課インフルエンザ対策推進室より講師をお招きし、日本の新型インフルエンザ対策の現状と同対策ガイドラインについて詳しく解説を頂きました。
JICA東京での講習 同・質疑応答
二日目は、静岡県立静岡がんセンターを視察しました。感染症内科部長からがん患者の抱える高い感染症リスク、抗菌剤の適正使用について学習しました。さらに、研修員たちは、陽子線治療棟、緩和ケア病棟などを視察し、担当の方に多くの質問を投げかけていました。
静岡がんセンターでの講習 静岡がんセンター内施設見学
三日目午前は、公衆衛生活動における感染症予防の具体的方法を理解することを目的に、東京都新宿区保健所を視察しました。新宿区保健予防課長が講師を務められ、地域保健の拠点として保健所の多岐にわたる役割、新宿区の住民特性からみた感染症対策(行動計画)の特徴、区民への宣伝を踏まえた咳エチケット等に関して装着写真を使って詳しく説明くださいました。
午後は、大学病院における新型インフルエンザの対策について学ぶため、順天堂大学感染症制御学教授より講義を受けました。この講義では、2009年に発生した新型インフルエンザの諸問題の説明、順天堂大学での実地診療に必要な予防策について分かりやすく解説いただきました。
新宿区保健所での講習 順天堂大学での講習
四日目は、高齢者の多い民間病院における院内感染症対策を学ぶため、横浜保土ヶ谷中央病院を視察しました。本病院は218床、外来1日500名の中規模の病院で、地域包括ケアシステムにおける中核病院としての役割を担い、感染対策委員会活動を積極的に行っています。訪日団は3チームに分かれ、感染対策ラウンドを行いました。感染対策として道線の引き方、効率的な作業環境の確保など、研修員にとって大変参考になったようです。総合診療科医長より保土谷中央病院における感染症対策の現状と課題について講演を聞きました。
横浜保土谷中央病院での講習 横浜保土ヶ谷中央病院の病棟見学
五日目は、特定感染症指定医療機関である国立国際医療研究センターを視察しました。本JICA研修計画立案にも多くの助言を頂いた大曲貴夫国際感染症センター長に講義頂き、日本の臨床現場におけるインフルエンザ治療薬の現状について詳しく解説いただきました。講義のあと、新感染症病棟を見学し、新興感染症発生時には、防護服を着て隔離された患者に対する治療をどのように行うか、また封じ込めに関する設備面の特徴について詳しい説明を受けました。
国立国際医療研究センターでの講習 同センター・新感染症病棟の見学
六日目は、JICA東京において統括会と修了式を行いました。統括会では、国立国際医療研究センターの大曲貴夫先生をお招きし、研修員からの多くの質問に一つひとつ丁寧に回答いただきました。次に、3つの研修員グループからそれぞれプレゼンテーション(現状の課題、本研修での学び、アクションプラン)が行われ、大曲先生より総評を頂きました。
中西部地域の院長・副院長グループの発表 中西部地域の医師グループの発表
中日友好医院・王団長の発表 NCGM大曲先生の総評
最後に修了式が行われ、JICA本部より研修修了証書が研修員一人ひとりに手渡された後、記念写真を撮って本研修の全日程を終えました。
修了証賞授与 修了証書授与
修了証書授与式での記念写真
大変お忙しい中、本研修にご協力をくださった講師の先生方、各病院スタッフの皆様に厚くお礼申し上げます。さらに、本研修の計画から最後の修了式までご指導ご列席を頂戴した大曲貴夫先生に深く感謝いたします。