日中笹川医学奨学生が日本の小説を中国語に翻訳出版!
2021/01/14
日中笹川医学奨学金制度第41期研究者、劉雨桐さんが中国語に翻訳した『ミナトホテルの裏庭には』(寺地はるな著)が2020年9月に中国の浙江文芸出版社より出版されました。
劉さんは、西安交通大学外国語学院日本語科修士課程を卒業、2019年4月より杏林大学大学院国際協力研究科博士課程で医療通訳の研究をしています。
劉さんが今回の翻訳を通じて得た日本語への深い理解は、医療通訳の研究に大いに活かされ、日中両国の患者と医療者との交流の発展に貢献されることを期待しています。
大学院時代に、日中笹川医学奨学金制度の先輩である李国棟先生(西安交通大学外国語学院日本語科副教授)のご紹介で、浙江文芸出版社の小説翻訳の仕事を引き受けました。幼少期より書くことが好きだった私にとって、これはとてもワクワクする体験と挑戦でした。
翻訳をし始めて、初めて文学翻訳の難しさを実感しました。文学は他の分野と違い専門用語は少ないですが、原文の微妙なニュアンスを外国の読者に適切な言葉で伝えることがとても難しく、キャラクターに合うセリフや文化的要素を上手く翻訳するには、非常に高い文学的表現力が必要です。加えて、翻訳する際に、日本語と中国語の言語的特徴にも配慮しなければなりません。例えば、曖昧表現の多用は日本語の典型的な特徴で、「以心伝心」の文化を持つ日本人同士では曖昧な表現でも双方の理解に齟齬が生じることはありませんが、それをそのまま中国語に訳すと、読者は話の内容をうまく理解できない可能性があります。そのため、いかに等価な翻訳を実現できるか、これからも引き続き研究すべき課題であります。
最後に、翻訳にあたり多大なご協力をいただきました皆様に、この場をお借りし、心から感謝を申し上げます。今回の文学翻訳の実践から得た日本語への深い理解を医療通訳の研究に活かし、日中両国間の医療分野の交流促進に寄与できるよう頑張ります。